臨床栄養学23-128

臨床栄養学23-128

23-128 糖尿病に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a インスリン依存状態の場合は、スルフォニル尿素薬が有効である。
b HbA1c値は、過去1〜2か月間の血糖の状態を反映する。
c 血圧のコントロールは、糖尿病合併症の予防に有効である。
d 食事療法における脂肪エネルギー比率は、40%にする。
(1) aとb (2) aとc (3) aとd (4) bとc (5) cとd

 

解説 a × スルフォニル尿素薬は、膵ランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌を促進させる。この薬は、インスリン分泌能がある程度保たれていないと効果がない。よって、インスリン依存状態(インスリンが分泌されていないため、インスリン注射を必要とする状態)の場合は、スルフォニル尿素薬は効かないということである。
b ○ HbA1cとは、血清糖化ヘモグロビン値のことである。血清糖化ヘモグロビンとは、赤血球のヘモグロビンに糖が結合したもので、食事内容、運動量やストレスの影響を受けやすい血糖値や尿糖値に対して、HbA1cは生理的因子による変動がない。ただし、赤血球の寿命が短縮される貧血では、HbA1c値は低値を示すため、注意が必要である。HbA1cは、赤血球の寿命が約120日であるため、その半分くらいの時期、つまり、過去1〜2か月の血糖の状態を知ることができる。
c ○ 高血圧だと、網膜や糸球体の毛細血管(細い血管)に負担がかかってしまうので、糖尿病の合併症を進行させる。
d × 食事療法における脂肪エネルギー比率は、20〜25%にする。
糖尿病の食事療法(2型糖尿病でなおかつ合併症のない患者における数値)は下記のとおりである。
■エネルギー … 標準体重×身体活動量で算出し、身体活動量は、次のように分類されている。
軽労作の場合:標準体重×25〜30kcal
普通の労作:標準体重×30〜35kcal
重い労作:標準体重×35kcal
■タンパク質 … 標準体重×1.0〜1.2g
■脂質エネルギー比率 … 20〜25%
■食物繊維 … 20〜25g
■炭水化物 … 55〜60%
菓子、ジャム、清涼飲料等はショ糖を多く含み血糖値及び中性脂肪を上昇させ、インスリン抵抗性を悪化させるため、なるべく少なくすることが望ましい。
解答 (4)

 

 

23-129 30歳事務職男性。1か月前より口渇、多尿があり、1週間前より全身倦怠感も出現した。近医を受診し、2型糖尿病と診断され入院となった。身長178cm、体重77kg(1か月前82kg)、標準体重70kg、血圧130/76mmHg、入院時血糖値520mg/dL、HbA1c13.5%、血清尿素窒素19mg/dL、血清クレアチニン0.8mg/dL、甲状腺ホルモン値正常、尿糖(+++)、尿たんぱく(−)、尿ケトン体(++)、運動習慣なし。
この患者の病態と治療に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 体重減少の原因は、エネルギー消費量の増加である。
(2) エネルギー摂取量は、2,400kcal/日とする。
(3) たんぱく質摂取量は、30g/日とする。
(4) 脂肪摂取量は、50g/日とする。
(5) 運動療法を開始する。

 

解説 (1) × 体重減少の原因は、脂肪の分解の亢進である。糖尿病は、組織の細胞に糖を送り込んで糖をエネルギー源として使えるようにしたり、グリコーゲン合成や脂肪組織での脂肪合成を促進し、エネルギーとして蓄えておくように働くホルモン、インスリンの不足や効き目が悪くなる病気である。糖を細胞内に取り込むことができないため、細胞内グルコース利用能は低下してしまう。血液に糖はあるのだが、糖が取り込まれないことで、身体は「糖が欠乏している」つまり飢餓状態だと勘違いしてしまう。よって、肝臓からのグルコースの放出が亢進し、アミノ酸等からの糖新生が促進され、脂肪がエネルギー源となりケトン体が体内に蓄積するという風に、身体で飢餓状態の代謝と同じことが起こってしまうのである。尿ケトン体(++)、運動習慣なしであることから、脂肪の分解が急激に進んでいると考えられる。

 

 

 

 

 

 

(2) × エネルギー摂取量は、標準体重×身体活動量で算出する。標準体重は、標準体重=身長(m)×身長(m)×22で算出する。この男性の場合、標準体重は70kgである。また、身体活動量は、下記のように分類されている。
軽労作の場合:標準体重×25〜30kcal
普通の労作:標準体重×30〜35kcal
重い労作:標準体重×35kcal
この男性の場合、事務職であり、運動習慣なしであることから、軽労作の場合に当たり、70kg×25〜30kcal=1,743〜2,091kcalと計算される。現時点で標準体重より7kg多いため、これよりも少な目にする必要がある。
(3) × たんぱく質摂取量は、標準体重×1.0〜1.2gで算出できる。このことから、70kg×1.0〜1.2g=70〜84g/日とする。
(4) ○ 脂肪摂取量は、脂質エネルギー比率20〜25%で算出される。1,743〜2,091kcalの20〜25%は、およそ350〜523kcalとなる。脂肪は1gあたり9kcalであるため、39〜58g/日と算出される。
(5) × 空腹時血糖250mg/dL以上で、尿ケトン体陽性者であるため、運動中に高血糖になるおそれがある。よって、運動療法は行わない。
解答 (4)